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早い朝は(火原和樹/金澤紘人/日野香穂子)

 交差点で金澤と鉢合わせた。
「お早うさん」
「おはようございます」
 ぺこん、と頭を下げて挨拶を済ませると並んで学校を目指す。
 朝早い通学路には他に星奏学院の生徒の姿は見られない。
「さすがに朝晩は寒くなってきたなぁ」
 金澤は肩を竦めて、冷たい風をやり過ごす。足は自然と早歩きになっている。
 それに追いすがるようにして、香穂子も足を速める。
「やだねぇ。寒くなると家から出るのが億劫になるんだよな」
 ぶつぶつと金澤がぼやいているのを聞いて、ぷっと吹き出す。
「笑い事じゃないぞ~」
 肩越しに、金澤は香穂子を振り返った。
 その恨みがましい目も香穂子の笑いを誘ったが、口を固く結んで笑いを堪える。
「………………」
 それでも香穂子が笑いたい気持ちでいることを金澤はしっかりと感じ取ったらしく、ため息をついた。
「俺も好きでこんなに早起きしてるわけではないんだがなぁ」
 もごもごと口の中で呟いていたが、静かな通学路で傍を歩く香穂子にはそれがきちんと聞こえていた。
「なあ、早起きは三文の得って言うが、お前さん得した覚えがあるか?」
 今度ははっきりと香穂子に聞こえるような声で問いかけてきた。
 答えようと口を開いた香穂子の耳に、軽快な足音が速いスピードで近づいてきた。
「日野ちゃん、金やん! おっはよー!」
 火原の元気な声が響く。あっという間に香穂子と金澤の間に火原は到達した。
「………朝っぱらから元気だなぁ」
「うん! そりゃそうだよ!」
 火原は満面の笑顔で頷いた。それからその笑顔のまま、香穂子のほうを向く。
「早起きは三文の得って、ホントだね~。だって、朝からきみに会えたんだし!」
 それを聞いた金澤は、苦々しい表情になる。
 その表情の意味がわかる香穂子はまた笑い出した。
「金やん、何、変な顔してるの?」
 火原がきょとんと金澤に問う。
「………何でもない。ただ、若人が眩しかっただけだ」
「?」
 金澤の言っていることの意味がやっぱりよくわからなかったのだろう。火原は首を傾げた。
「いい、いい。お前さんは気にすんな。んで、日野。お前さんは笑いすぎだ」
 ひらひらと手を振って、金澤は二人の前を歩いていった。


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登校時間をとても早い時間にすると見られる、金やんと火原の会話イベントを二つくっつけてみました。同じ「早起きは三文の得」を使って対照的なのが面白くて、ずーっと気になってたので。
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