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嵐のまえに

 その視線が気になった。鋭さを含んだ視線―――。
 香穂子と海辺の公園を歩いていた。休日なのに人気はあまりなく、静かに過ごすには絶好の場所。月森は香穂子とよくここへ来る。ゆったりと歩いて、木陰で休んで語らうだけ。たった、と言ってしまえばそれだけだが、月森にとってはかけがえのない時間。
 香穂子との会話は、月森の中にいろんな感情を呼び起こす。今まで知らなかった感情もそこには生まれていた。
 そのことを最初こそ戸惑ったものの、今ではむしろ楽しみにしている。それがどんなに負の感情であったとしても、香穂子とでなければ生まれなかったものだと思えば、受け入れられる。
 今日も香穂子と同じ時間を共有して、満たされていた。
 そして、視線を感じたのだ。
 視線を辿っていくと、そこには同じ年くらいの男が一人立っていた。
 明るい髪の色が太陽の光を受けて輝いている。表情は読み取れない。それほど近くではなかったからだ。
 だが、こちらに向けられている視線の鋭さだけは伝わってきた。
「月森君?」
 月森が立ち止まって背後を振り返ったため、香穂子も自然と歩みを止める。そして月森の視線を追って―――。
「あれ? 加地君だ」
 そう呟いた。
「………知り合いなのか?」
「うん。話してなかったっけ? うちのクラスに来た転校生」
「ああ、聞いていない」
「そうだっけ。じゃあ折角だから紹介するね。―――加地くーん!」
 香穂子は大きく手を振って加地を呼んだ。
 その瞬間、視線の中から険しさが消えた。
「………………」
 香穂子の呼びかけに応えて加地は歩み寄ってくる。近づいてくるにつれて、その表情が見とれるようになる。
 笑顔だった。人好きのする笑みを浮かべている。
「偶然だね」
 香穂子に笑いかけて、そして横目で月森を見た。
 その瞬間、気がついた。
 さっき、視線の中に険しさが含まれていた理由に。
 香穂子はそれに気がついていないようだ。月森のことを加地に紹介し、加地を月森に紹介している。
(気がつくわけがないか………)
 あの敵意は月森だけに向けられたもの。
 そして、香穂子を好きだからこそ気がついたものなのだから―――。

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コルダ2発売が決まってから、妄想が止まらなくなったので書いた一品。転入生に対してみんながライバル意識を燃やすといいと思うところからスタート。日記ブログのほうでいくつか書いていたので、それを纏めるにあたり月森も追加。しかしながら、月森だけはどうしてもいつまでも出来なかったのでした。ちなみにこのシチュエーションだと月日カップルが出来上がっていることになりますね。ゲームを考えると、これはありえないんですが。



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