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オモイのイロ

「東金さんって、色黒いですよね」
 かなでが唐突にそんなことを言う。脈絡がなさ過ぎて「は?」としか返せない。
 最近、鮮やかな音を奏でるようになった―――それは大いに千秋の影響であるところは間違いない―――細い手で包み込むようにグラスを傾けたかなでは、その仕草でグラスから涼やかな氷の音を響かせる。
 ファイナルまであと三日。必死になるのはわかるが、どうにもこうにも根を詰めすぎているようだったので、千秋が休憩に誘ったのだ。芹沢あたりが見たら度肝を抜くかも知れないが、二人の前にあるグラスにアイスティを注いだのは、千秋自身だ。
 もっとも、そのアイスティを作って冷蔵庫にストックしていたのはかなでなのだが。
 昼下がりの菩提樹寮のラウンジ。
 静かな空間には、千秋とかなでだけ。
 ゆるゆると過ぎる時間で、ゆったりとしていたところに投下されたのは、予想もつかないかなでの言葉。一体、何を考えていたのか。
 ―――何を考えていたのかは丸わかりだ。
 千秋は口元を緩める。
「なんだ。俺のことが気になるか」
 からかいの口調。かなでの反応がわかっていての、その言い方だ。
 案の定、かなでは頬を赤くする。
 この反応が、たまらなく、愛おしい。
「いいぜ。この際だ。何でも教えてやる。さあ訊け」
 人差し指を上に向けてくいくいと動かし、かなでに質問を促す。
 かなではぱくぱくと何度か口を開け閉めしていたが、頬に赤味を残した状態で千秋の提案に乗ることにしたようだ。
「日焼けじゃなくて、色黒なんですか?」
 さっきの発言の続きらしい。そんなに気になるのか。気になるポイントが謎で、でも面白い。
「そうだな。好きこのんで日に焼けた覚えは無いな」
「そうですか」
 まさかと思いたいが、どうやら、これ以上この話について、かなでは膨らますつもりはないらしい。本当に、ただ単純に疑問に思って訊きたかっただけのようだ。
 それならば仕方が無い。
 千秋のほうから話を広げてやることにする。
「証拠でも見せようか」
「え?」
 きょとんとするかなでを他所に、千秋はすくっと籐椅子から立ち上がった。
 そして、徐にベストを脱ぎ、シャツのボタンを外す。その間、かなでの表情を伺うことは忘れない。
「えええっ」
 シャツのボタンに手をかけたあたりで、かなでは千秋が何をしようとしているのか察したらしい。顔が尋常じゃ無く赤くなっている。あれでは、せっかく寛いだ体を熱くしていることだろう。
 もちろん、千秋はわかってやっている。
「なななななにを………!」
 慌てるかなでがまた面白くて、可愛い。
「ほら、どうだ。満遍なく黒いだろう」
「わわわわわかりましたから! っていうか、別に疑ってないです!!」
 かなでは真っ赤な顔を下に向けて、ぶんぶんと首を横に振っている。
「そうか? それならそれでいいが、どうせだからしっかり知っていて貰おうと思っただけなんだがな」
「も、もう充分です!!」
「何なら、下も………」
 言いながらズボンのベルトのバックルに手をかける。敢えて大きめの音を立てながら―――。
 声になりきらない、か細い悲鳴がかなでの口から漏れている。
 さすがに。
 もう、笑いを抑えられなかった。ぶっと吹き出すと、盛大に笑い声を上げる。
 かなではまたぽかんとした顔をしていた。
 ああ。また、油断している。
 これだから、かなでに構いたくなる。もっと意識しろと言いたくなる。ちょっかいを出さずにいられない。
「………も、もしかして、からかったんですね?」
 幾分、声が低い。これはちょっと怒っている。からかいすぎたか。
「からかっちゃいないさ。心から、俺のことを知って欲しいと思っているだけだ」
 白いシャツを羽織る。ボタンは留めない。かなでとの間にあるテーブルに手をついて、ぐいっとかなでのほうに身を寄せた。
 怒っているかなでは、引かない。さっきまでなら、仰け反っていたに違いないのだが。
「もっと俺に興味を持て」
 引かないのなら、それでいい。
 首を伸ばして、かなでの頬に唇で触れる。
 かなでが息を呑む。
 口元に笑みを浮かべて、千秋はもう一度、かなでの頬にキスをした。

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千秋連投です。夜中に書くもんじゃないです。妄想爆発してました。そして、なにげにセクハラ大王千秋様。多分、すれっすれ。でも、思うようにかけて満足です♪ 当初は上半身裸になったところで芹沢あたりに「何をしているんですか!」とか、邪魔に入られそうかなと思っていたんですが、そうしない方向に持って行って、良かったかな。ところで、千秋の色の黒さは地ですよね? 日焼けとか日サロとかじゃないですよね。
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